実家の火の元が心配。IHや自動消火、親に合う対策の選び方
親のコンロの消し忘れが心配な家族へ。IH、安全機能付きコンロ、火災警報器、自動消火装置の役目の違いと、帰省で確認すること、自治体の給付の調べ方を整理します。
目次
この記事の要点
- 火の対策は「出さない・気づく・消す」の3つの役目で考える
- IHに替える前に、鍋・操作・停電時の使い方を親と確かめる
- 警報器の点検と、自治体の給付の有無は帰省前に調べておく
実家の親は、煮物をかけたまま電話に出たり、洗濯物を取り込みに行ったりしていないでしょうか。離れて暮らしていると、台所の様子は見えません。「鍋を焦がしたことがある」と聞いたり、帰省して焦げた鍋を見つけたりすると、急に不安になります。
結論から言うと、火の対策は「火を出さない」「早く気づく」「小さいうちに消す」の3つの役目に分けて考えると、親に合うものを選びやすくなります。この記事では、それぞれの役目を担う道具の違いと、帰省で確認すること、自治体の給付の調べ方を整理します。
まず知っておきたいこと
消防庁の検討部会報告書(令和3年6月)によると、近年の住宅火災による死者のうち、65歳以上の高齢者の占める割合は約7割で推移しています。高齢者の死者が出た住宅火災の出火原因では、たばこ、ストーブ、こんろ、電気関係が多くを占めるとされています。出典:消防庁「高齢者の生活実態に対応した住宅防火対策のあり方に関する検討部会 報告書」(令和3年6月)
同じ報告書のアンケートでは、調理用の加熱器具で「危険を感じたことがある」人が約16%でした。いちばん多かった理由は「火元から離れて油などを加熱しすぎた」で、10.9%です。出典:消防庁「高齢者の生活実態に対応した住宅防火対策のあり方に関する検討部会 報告書」(令和3年6月)
3つの役目で考える
火の対策は、道具の名前から考えると迷います。「出さない」「気づく」「消す」のどの役目を、どの道具に任せるかで整理すると、足りないところが見えます。
出さない
IH・安全機能付きコンロ
炎を出さない、切り忘れを止める
気づく
住宅用火災警報器
煙や熱を音と声で知らせる
消す
自動消火装置
熱を感じると消火液を出す
1つに頼らず、役目を分けて組み合わせると安心です
どれか1つを入れれば十分、というものではありません。IHにしても、揚げ物の油が熱くなりすぎれば火が出ることがあります。警報器は鳴るだけで、鳴ったあとに親が動けるかどうかは別の話です。役目を重ねておくと、1つが働かなかったときの余裕ができます。
出さない対策
最初に確かめたいのは、今あるコンロにどんな安全機能が付いているかです。ガスコンロには、鍋の底の温度が上がりすぎると火を止めたり、消し忘れを知らせたりする機能が付いたものがあります。報告書によると、ガスこんろの使用者のうち、安全装置が付いているものを使っているのは8割を超えています。
とはいえ、使用年数が長いコンロは機能が古い場合があります。報告書でも、76〜80歳の人は調理用加熱器具の使用年数が長めの傾向でした。型番を控えて、メーカーの案内でどんな機能があるかを調べてみましょう。
IHに替える前に
IHは炎が出ないので、衣類への引火や吹きこぼれの火の心配が減ります。一方で、替えたあとに困る点もあります。
- 鍋が使えるか 一般的なIHは、磁石がつく鍋でないと使えません。手持ちの鍋が使えないと、結局ガスのこんろを出してしまうことがあります
- 操作に慣れるか ダイヤルで火力を変えるものと、タッチ式のものがあります。親が迷わない形かどうかは、実物を触って確かめます
- 停電のとき 停電中は使えないので、カセットこんろなど別の備えを決めておきます
選ぶ前に、鍋なしで加熱しないか、切り忘れで止まるか、空焼きを検知するか、といった機能の有無を、機種ごとに確かめます。炎が出ないぶん「消えている」と思い込みやすいことも、親に伝えておきたい点です。
| 心配なこと | 向く対策 |
|---|---|
| 消し忘れて外出 | 切り忘れを止める機能 |
| 油を熱しすぎる | 温度を抑える機能 |
| 衣類に火が移る | 炎の出ないIH |
| 操作が難しい | 使い慣れた型を残す |
気づく対策
警報器は、火が出たときに最初に知らせる役目です。住宅用火災警報器は、設置から10年がたつと電池切れや部品の劣化で作動しないおそれがあります。消防庁の資料でも、電池切れのときに設置から10年以上が経過している場合は、本体を交換することが望ましいとされています。出典:消防庁「住宅用火災警報器の設置・維持管理」(『消防の動き』2017年5月号)
帰省したときにできるのは、次の3つです。
- 取り付け時期を見る 本体に製造年や交換の目安が書かれています。分からなければ取扱説明書か販売元に聞きます
- 作動を確かめる ひもを引くか、ボタンを押して、音や音声が鳴るかを親と一緒に確認します
- 台所に付いているか見る 寝室と階段だけで、台所には付いていない家もあります
同じ資料には、高齢者と同居している家や3階建てなどでは、火災を早く知らせられる連動型への交換も検討するとあります。親が一人で暮らしている場合、鳴っても気づけない状況を減らしたいときの選択肢になります。
消す対策
「小さいうちに消す」を担うのが、台所用の自動消火装置です。熱を感じると、消火液を出して初期の火を抑えます。親が慌てて動けなくても働く点が、ほかの対策と違うところです。
ただし、取り付ける場所や対応するコンロの種類があるので、買う前に販売店や自治体の窓口で確かめます。使ったあとの掃除や、交換の目安も取扱説明書で確認しておきます。
IH・安全機能
火を出さない
- 任せる役目
- 出さない
- 確かめる
- 鍋と操作
火災警報器
早く知らせる
- 任せる役目
- 気づく
- 確かめる
- 10年の目安
自動消火装置
小さいうちに消す
- 任せる役目
- 消す
- 確かめる
- 取り付け条件
3つの道具は、それぞれ別の役目を持っています
自治体の給付を調べる
自動消火装置や電磁調理器は、自治体が高齢者のみの世帯などに給付や助成をしていることがあります。たとえば東京都杉並区は、65歳以上で認知機能が低下した高齢者のみの世帯を対象に、自動消火装置(台所用)、ガス警報器、電磁調理器のうち1つを給付しています。出典:杉並区「高齢者の住宅用防災器具の給付」
条件は市区町村ごとに違い、購入の前に申請が必要な場合もあります。先に買ってしまうと対象外になることがあるので、まず窓口に聞きます。聞く先は、実家のある市区町村の高齢福祉の窓口か、地域包括支援センターです。見守りに関する自治体の事業は自治体の高齢者見守り事業、実家にもある?調べ方で調べ方をまとめています。
声かけで習慣を支える
道具を入れても、使うのは毎日の親です。「出かける前に火を見る」「鍋をかけたらタイマーをかける」といった習慣は、離れていても声をかけて支えられます。ただ、「火の元は大丈夫?」と毎回聞くと、見張られていると感じさせてしまいます。
天気や献立の話に混ぜて、「今日は何を作るの?」「タイマー使ってる?」と聞く形が続けやすい方法です。冬は暖房器具の事故も増える時期なので、親が冬に暖房を使わない。離れていてできる声かけと備えも合わせて読んでおくと、話題が広がります。
BabuuTalkは、家族が書いた伝言が実家のタブレットに大きく表示され、親は「わかった」を押すだけで応えられる仕組みです。Android端末(タブレットや使っていないスマホ)があればアプリは無料で、続けて使うならタブレットが見やすい画面です。「出かける前に火を見てね」と一言添えておくと、文字が打てない親にも、同じ言葉を毎日のように届けられます。
火災や救急のときの連絡の考え方は緊急通報装置と見守りサービス、何が違う?にまとめています。万一のときに連絡する人は、一人暮らしの親の緊急連絡先、誰に何を揃える?で揃えられます。
今日できる、最初の一歩
最後に、今日から始められることを3つ挙げます。
- 次の電話で、今日の料理を聞く。 「鍋をかけているとき、タイマーは使う?」と、責めない形で使い方を知ります
- コンロの型番と、警報器の取り付け時期を聞く。 親に写真を撮ってもらうか、帰省のときに家族が確認します
- 自治体の窓口に、給付があるかを聞く。 買う前に、地域包括支援センターか高齢福祉の窓口へ電話します
火の対策は、1つで完璧にするものではありません。親が使いやすい形を選び、役目を重ねていくことが、離れて暮らす家族の安心につながります。気になる変化があれば、地域包括支援センターやかかりつけ医にもご相談ください。